昭和28年、1953年当時の「染めの花」の流通についての雑誌記事 戦前の「マジック・ダイ」にも触れている。
『農耕と園芸』1953年7月号 営農相談のページに寄せられた「着色した切花」についての回答。回答者は、戦後の花業界を官の方で支えてくれた農林省の加藤要氏。
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切花の人工着色
問
近頃、生花商の店先に水色や青色のカーネーションを見かけますが、これは着色したものでしょうか、(東京都中野区田村エツ子)
答
これは、生花商の手で着色しているものもありますし、生産者が着色して市場に出荷しているものもあります。カーネーションのほかにはハナショウブなども、よくこれを赤く着色したものが売らられ、また、スズランなどは、若い人が机の上に挿した花を赤や青に着色をして面白がっているのを見かけることがあります。
これは、よく見ると花弁の脈のところがすじに色がついているので判りますが、切花をいける水に染料やインキを溶かしておいて吸わせたものです。
しかし、これはどんな染料でもよいわけではなくて、直接染料や媒染染料は花が吸上げません。普通毛染、または絹染酸性染料が適当でこれを溶した液に切花を挿込んでおくと、容易に吸上げて着色します。
この酸性染料のうち、アシド・ローダミン(紅色)、キノリン・イエロー(黄色)、パテント・ブリュー(青色)の三色を用意すれば、これを配合してどんな色にも着色できます。
カーネーションの切花に使いますと、摂氏二○度前後の温度で、五~一〇分ぐらいで見事に
また、カーネーションの茎の根元を二本に割いて、それぞれ赤と青というように違った色の液に挿しておくと、一つの花が半分が赤で半分が青というようにすることもできます。
バラ、サザンカ、サクラなどの木物も、一晩ぐらい浸しておくと着色します。
このように、染料を吸わせて着色した切花は、着色しないものにくらべてかえって花保ちがいいのも便利です。
前記の着色用の染料は戦前「マジック。ダイ(魔法の染料)」といって売出されていましたが、今は染料屋で求めることができます。 (回答 加藤要 農林省特産課)
参考「マヂック・ダイ」のこと