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構想から6年!昭和10、11年にかけて、誠文堂新光社から『牧野植物学全集』全6巻と総索引一冊が刊行された。そうとうにたいへんだったことがわかる石井勇義氏の編集所感

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『牧野植物学全集』第四巻に掲載されている石井勇義氏の「編集所感」 牧野博士がどんな仕事ぶりだったのか、 とても生々しい描写にドキドキする。 (めちゃくちゃに牧野先生を ディスりまくってます( =^ω^) 信頼関係がなければ書けない文章がここにある。 校正の神様と呼ばれた神代氏は、全集の仕事なかばにして逝去された。牧野全集で命を縮めたのか?! https://ainomono.blogspot.com/2023/01/1959.html 以下、全文 (現代仮名遣いに直してあります) 編集所感 本邦植物学界ノ嗜宿(きしゅく)デアリ、我国ニ於ケル泰西植物学ノ建設時代カラ引続イテ偉大ナル仕事ヲ為サレタ結網学人牧野博士ガ斯学界ニ残サレタ足跡ヲ一ツノ全集トシテ刊行シタイト考ヘタノハ抑モ昭和四年ノ秋デアッタ、当時私ハ『最新園芸講座』ノ編纂ニ熱中シテ居タノデ、屡々先生ニオ目ニ力ゝル機会ガアリ、先生ノ偉大ナル学殖ニ接スルニ及ンデ益々全集刊行ノ必要ヲ痛感シ、其事ヲ畏友、恩田經介君ニ計ッタトコロ非常に賛成サレ助力スル旨ヲ約サレタ、ソコデ小川誠文堂新光社社長ニ案ヲ示シタ処、コレ又快諾サレタノデ昭和五年ノ一月カラ原稿ノ浄書等ノ準備ニ着手シタ、然ルニ私ハ其後『原色園芸植物図譜』ノ著作ニ従事シ続イテ牧野先生ノ『原色野外植物図譜』ノ刊行ニモ参画スルコ卜ニナッタノデ全集ノ刊行ハ自然遷延シ、愈々編纂ニ着手シタノハ昭和九年五月カラデアッタ ソコデ第一回配本デアル『日本植物図説集』ノ原稿ヲ揃へテ印刷所ニ廻シタノデアッタガ、従来学術書ノ編纂ニ経験ガ乏シカッタノデ、先生ハ印刷ニ校正ニ極メテ精密ナル態度ヲ以テ御指導下サッタノデアルガ、何分編集者モ印刷所モ不慣デアッタノト、発刊ヲ急イタ為メニ第一回配本ハ完璧ヲ期シ得ナイ点モアッタ、コノ編集校正ニハ「実際園芸編集所」ノ浅沼喜道君ガ協力サレタ  第二回ハ『植物随筆集』デアッタガ、コレニハ校正ノ神様卜称サレタ友人ノ神代種亮(コウジロタネスケ)君ガ協力サレタ、同君ノ校正ニカケテハ大正、昭和ヲ通ジテ第一人者デアッタガ科学書ノ経験ニハ乏シカッタ為メニ非常ニ苦心サレタノデアッタガ同君ハ同書ノ校正ヲ半バ終ル卜狭心症ノ為メニ不帰ノ人トナラレタコ卜ハ哀悼ノ至リニ耐ヘナイトコロデアル、斯クシテ同巻ノ再校ハ神代君ノ校正ノ後ヲ更ニ牧野先生ガ私ト共ニ東海道国府津ノ旅館ニ滞在シテ校了ニサレタ

『実際園芸』には、寄稿者のための専用原稿用紙が存在した。

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園芸文化協会『園芸文化』No.131 園芸文化協会『園芸文化』131号に掲載された小笠原左衛門尉亮軒氏の連載「寸暇録」第6回「牧野富太郎著作本とその出会い」のなかに掲載された、牧野博士の生原稿の写真により、実際園芸の原稿用紙が使われていることがわかった。 原稿用紙は、紙面構成の際の三段組、四段組に便利なように縦書きの21字詰め×13行で、4段組用に17文字のところに印がつけられていた。紙面は一段26行で構成されているのでそのための13行だったと思われる。 現在では、パソコンで文字数や段組みも自由自在にできるため、原稿用紙を利用する機会は大きく減っている。 『園芸文化』131号の写真には、赤字で文字サイズやルビの注意などの編集指示が書き込まれている。石井自身か、編集局のだれかが書き込んだものだろう。 赤い太字の97、227という数字は文字数でもなくページ数でもないみたいだ。なんだろうか。 「実際園芸原稿用紙」実際園芸社  *縦書き21字×13行の規格で、17文字のところに点線で印がある。 原稿用紙の左隅には以下の文字が印刷されている。 (1)文章は言文一致体で各節の初は一字明ける事 (2)図及写真の入場所を大体示されたき事(但しこの用紙には写真の入れ場所をあけて書く必要はありませぬ) (3)外国の地名人名品種名等は片仮名にて、専門記事の場合は欧文を入れて差支なき事 (4)この用紙の廿一字詰は三段組の場合、十七字詰めは六号四段組である。 (昭和十、六、 一〇・〇〇〇枚) 冒頭にあげた牧野先生の原稿「棕櫚竹と観音竹の渡来」は、「23-1」(昭和12年7月号)に実際に掲載されている。原稿用紙37枚だったというのでだいぶ分厚い記事だったのか、あるいは、別号に分けて掲載されたか、まだ未見なので早急に調べたい。 牧野先生の原稿は、「23-1」(昭和12年7月号)に実際に掲載されている ↓「20-1」の3段組の事例。外側に黒枠を入れたレイアウトでは一段の行数は26行(13行×2)となっている。枠がなければ28行の割付。↓ 牧野富太郎博士は、文章にこだわりがあり、句読点の使い方など独自のルールでやっていたようだ。下に、牧野博士の連載「園芸植物瑣談」その9の画像を示す。 https://ainomono.blogspot.com/2023/03/1011.html ここでは、全集と違っ