昭和2年の玉川温室村のようす 烏丸光大氏、藤井権平氏、犬塚卓一氏、鈴木譲氏、荒木石次郎氏らの温室写真 冬季、東京もマイナス10℃になる時代
『実際園芸』第2巻第3号 昭和2(1927)年3月号
大規模なる切花栽培を専門とする欧米の園芸場さながらの、玉川温室村
東京目黒駅より、日黒蒲田行の郊外電車に乗り換えて、『田園調布』という停留場で下車して、それより西に五六町、玉川河畔の上沼部というところに行きますと、所謂玉川温室村があります。ここには僅か数町の間に、二千坪近い温室があり、今も続々と新温室が建てられて居ります。ここに居られる園芸家は、大抵米国に長い間居って温室業に従事して居られた人々が、帰朝して米国式にやって居られます。
(1)温室村の中央にある、藤井(※権平)氏の温室。百坪からの温室が二棟ありましてカーネーション、洋菊などをアメリカ式作られております。
(3)これは、ここの温室村の開拓者ともいうべき、荒木石次郎氏の温室。荒木氏はスウヰートピースでは日本一といわれているくらい、優れた切花を市場に出しております。
(4)鈴木譲氏の園芸場。鈴木さんは、農業大学の講師をされている方で、実際的の研究を深らしむるためにここに立派な園芸場を経営しておられます。
※鈴木譲氏は銀座、スズキフロリスト、鈴木昭社長の父親
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東京ですらも零下10℃という極寒の真中に、玉川温室村には、かくも美しき色どりの世界が見られる
1 荒木石次郎氏のスウヰートピース温室の内部。前にも述べた通り、冬咲スウヰートピースの切花栽培では荒木氏は代表的な人であります。いずれもスウヰートピースは温室内の床にぢかに定植してあり、上へ上へと花をつけております。
2 温室村の中央にある犬塚氏のカーネーション温室です。犬塚さんは、米国オレゴンに十八年も居られた方で、この温室の材料も全部米国からお持ちになられたものだそうです。カーネーションの花立ちがいかに見事であるかを御覧ください。
3 二項園(※烏丸氏)温室中のシクラメン栽培室の内部
玉川温室村は、切花ばかりかというと、こうした鉢物も見事なものを作っておられます。
4 同じく二項園のバラ栽培室の内部、何せ全体で一千坪にも近い温室ですから、百坪くらいずつの室に専門的に冬種の植物を栽培しておられ、ここの分園では、森田喜平氏が主として栽培に当っておられます。