戦後の「創作花器」について
海外のフローラルアートと日本のいけばなとを比べるとき、日本の花器の種類(型・材質・色・デザイン)の多様性はずば抜けている。ときには作品の価値に決定的な役割を果たす場合も少なくない。大量生産のものもあれば作家ものもたくさんある。
これは戦前にすでに動きがあった。
●戦前に動き出した新しい花器について 安達潮花
https://ainomono.blogspot.com/2022/02/13.html
ここで紹介するのは戦後のいけばなブームのさなかに出された『いけばなへの招待』1958のなかにある記事である。大和花道会の下田尚利氏と評論家の重森弘淹氏による著作。タイトルのように初心者に向けて書かれた手引書だが、それゆえに分かりやすく解説してある。一般的でどんな場所にも使えるいくつかの花器を紹介したあと、「創作花器」や自作の花器にチャレンジしてみると面白い、と誘う。この時代のいけばな書には、このようなDIY的なアドバイスが多い。まだまだモノが手に入りにくかったり、使えるお金に制限がある若者に、工夫することを勧めている。
器を変えることで、「新しいスクリーンによる映画」のようにいけよ、というのである。
●いっぽうで、あまりにも工芸的な手の込んだものであったり奇抜な絵付けでは花がひきたたないので、シンプルなものがよいという作家もいる。
●基本の花器は、1、水盤、2、皿、3、鉢、4、壷あるいは瓶、5、コンポートをあげている。