現在の農業協同組合や日本農業新聞のような役割を担った農会と各道府県の「販売斡旋所」とはどんな仕事を担っていたのか

第6巻2号 昭和4(1929)年2月号

※農家が生産した作物をいかに有利に販売するか、明治期の日本政府や地方自治体では「産業組合」や「農会」等の組織を設け、農家の加盟を義務付けるとともに、農民の暮らしを守るような施策を実行していった。

【産業組合】 (「コトバンク」から)

明治33年(1900)産業組合法によって設立された協同組合。信用・販売・購買・利用の4種があり、資力の弱い中小生産者・農民の保護と救済を目的とし、特に農村で発達した。第二次大戦後は各種の協同組合に移行。→農業協同組合、現JAなどへと継承されている。

【農会】(「百科事典マイペディア」から)

農会法(1899年),農会令(1900年)に基づき,農業の改良発達を図ることを目的として設けられた団体。市町村,郡,都道府県の系統農会の3種と中央組織の帝国農会があった。農業技術・経営の指導,普及を通じて政府の農政を浸透させ農民を把握(はあく)する役割を果たしたが,1943年農業会へ発展統合された。

※日本園芸会の発起人に名が残る前田正名、玉利喜造、池田謙蔵のほか、横井時敬、沢野淳、石川理紀之助らが農会設立に尽力したが、政府の補助を受けた官制でいくか(横井派)、民制の独立路線で行くか(前田派)で意見が分かれた結果、政府統制下で進めることになり前田派は離脱する。中央団体は帝国農会。


販売斡旋所は何をする所か  編集局


斡旋所のおこり

販売斡旋所(はんばいあっせんじょ)と普通に呼ばれておりますが、本統にいけば、農会連合販売斡旋所というべきであります。この斡旋所は、何のために出来たのかと言いますと、現在の農村で一番欠点の多い農産物や園芸生産物の販売を改善するために設けられたのであります。もっともこれは昔から府県農会で試みられたのでありますが単独に一、二の府県農会斡旋や奨励をしたのでは、十分な成績が挙げられないので、進んで専門に販売を斡旋する機関の必要を感じ、大正七年に関西で各府県農会の連合による連合販売斡旋所を、大阪と神戸に設けたのが、最初でありました。ところがその成績が甚だよろしかったので、翌年の大正八年には、関東、東北、北海道の道府県農会の連合販売斡旋所を、東京と横浜に設け、また九州七県の農会の連合販売斡旋所を門司に設けたのであります。大正十四年には関東、東北、北海道の各道府県農会連合によって、札幌にも設立されました。

それで現在(※昭和4年)では東京府と沖縄県とを除き、一道、二府、四十一県は、三連合を組織し、全国に六個所の斡旋所を設立したのであります。もっとも沖縄県も単独に斡旋所を、東京に設けております。


斡旋所の組織と所在

斡旋所の組織はどんなふうになっておるかと申しますと、連合した農会は斡旋所の所在地にある農会を代表として委嘱し、その委嘱された農会が主体となって経営し、連合農会はそれぞれ負担金を支出して、その事業や販売方法等は協定しておるのであります。

大阪の販売斡旋所は、大阪府農会を経営主体とし、大阪市東区南新町一ノ二六にあり、加盟府県農会は、京都、大阪、兵庫、愛知、三重、奈良、滋賀、岐阜、福井、石川、岡山、広島、山口、和歌山、徳島、香川、高知の二府十五県の農会であります。同じく二府十五県の農会で神戸市下山手通四丁目にある神戸販売斡旋所は兵庫県が経営の主体となっております。

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東京販売斡旋所は、所在地東京府が加盟しておりませんから、千葉県農会が主体となって経営し、東京市神田区旅籠(はたご)町一丁目二十五番地に設立され、北海道、神奈川、埼玉、群馬、千葉、茨城、栃木、山梨、静岡、新潟、福島、宮城、岩手、青森、山形、秋田、富山、長野の一道十七県の農会から成立しております。同じ一道十七県の連合で横浜販売斡旋所は神奈川県農会を主体とし、横浜市岡野町八十番地に設立されております。

門司販売斡旋所は、九州七県即ち大分、熊本、宮崎、鹿児島、佐賀、長崎の連合で、福岡県農会を経営の主体として、門司市仲町三丁目に設けられております。


どんな仕事をしているか

斡旋所ではどんな事業をしているかといいますと、第一に農産物や副業品の販売の斡旋をなし、また取引商人の信用調査、売上代金の取立等を取扱い、その他市況の調査通信を行います。また生産者からの荷造や輸送方法の改善指導、その他の施設を行いつつあります

販売を斡旋するのは、農家の生産物について農会、産業組合その他共同で出荷するのを目的とする団体が、農会から紹介のある個人の生産物について、その販売を斡旋するのでありまして、取扱う品目は米穀類から蔬菜、果実、副業品等であります。

なお出荷主(しゅっかぬし)の便宜をはかり取引を円滑にするために、取引商人の信用調査をなし、販売斡旋を取扱ったものの代金も、荷主の代理となって取立を行うこともあります。

市況の調査と通信は、公正な販売価格を維持するため、また需要供給の円滑を図るために、最も必要なことでありますから、現在では隔月または一週間に一二回ずつ、市況通報というものを発行して、主要農産物の市況、価格等を通信し、その他機会ある事に各種の印刷物を発行しております。また繭の販売とかその他急を要するものは、電報で通信を行う場合もあります。

その他荷造輸送方法の改善のために、実地指導講習会を催したり、また付帯事業として、農具肥料等の購買斡旋をも行っております。

(農林省農務局調査より)


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