昭和七年のDIY、自分で作るウインドウボックスと玄関ポーチのコンテナ 米国では日系人が利用する小さな醤油樽が利用されていた。

 

アメリカで沢山の経験をもっておられる犬塚卓一氏の考案せるもの

『実際園芸』第13巻2号 昭和7(1932)年8月号

洋風住宅に相応しい
ウインドボックスとポーチボックス
その造り方と飾り方
川泉弘治

 近頃我国でも洋風の住宅が各所に建てられるようになり、いわゆる、文化住宅が随所に見られて来た。コンクリート建物などを在米の日本建築に比較すると、その外廓の大部分は壁またはコンクリートをもって畳まれているので、ややもすると単調味の嫌いがある。それで勢い装飾等により調和してその住宅美か求むることが必要となって来る。
一般に行われている簡単な装飾としてウィンド・ボックスまたはポーチュ・ボックス等が欧米に於て住宅装飾として用いられる。
 ウインド・ボックスは窓際に設けられるもので、我国でも欧米に倣って漸次これを取付けつつあるのを見るが、未だ一般化されているとはいい難い。ポーチュ・ボックスは日本建築でいえば縁側に該当すべき場所に備えらるるものであるが、これは前者程一般に知られず、ホンの一部分人に依って利用されているに過ぎない。
これ等は何れも堅牢な木にて箱を造り、それに季節々々に応じて矮性の植物、或は蔓植物を植え付ける。観賞と同時に住宅の装飾とするものである。例えば春にはチューリップなどを植え、それが咲き終ればゼラニューム、ベゴニア、或は夏向の各種の花卉を取混ぜて配合よく植込み、秋になれば矮性の常盤樹(ママ)類に植え換るという様な方法が最も手軽で一般向であろう。




ウインド・ボックスの作り方

  ボックスの大きさは窓の大小に依って寸法を定める。材料としては檜、樅、杉等何れでも良いが出来得るならば耐久力の強い堅牢なものに越した事はない。厚さ一寸、幅八寸乃至一尺二三寸か限度とし、深さ七八寸乃至一尺一ニ寸が最も適当である。そして排水の便宜のため、必ず底部に二つ三つくらいの孔を穿って置く、この孔はボックスの大きさに依って適宜その数を増せばよい。なおボックスはそのままでは殺風景であるから、その窓に調和した色合のペンキを塗布するのが良い。これは単に美観を増すばかりでなく耐久力の増加ともなるのである。
 ボックスが出来上ったならば木製または鉄製の支柱をもって予め決めて置いた窓際に取付けるのであるが、階下の窓用としては地面から直接支柱を建ててボックスを取付ける方法や、或は住宅を建築する場合にボックスを備え付ける場所を特に固定して植換えその他の便宜上ボックスのみを取脱し得る様に工夫を施した方法もあるが、最も簡便なのは鉄製鋳物の支柱または木製の支柱を取付け、これにボックスを載せる方法である。但しこれは木造建築には差支えないが、コンクリート建築には不可能である。

植付に適する草花

ウインド・ボックスに植付けるに適当な花卉類としては、かなり矮性のものが適している。植付けるには中央が盛り上る様に、すなわち三角形に近い形に按配するのがよい、例えば春にはチュウリップ、ヒヤシンスを中央にしてその周囲にゼラニュウム等か植え、縁植としてアスパラガス・スプレンゲリー等を使用するのである。
先にも述べたようにこれを四季を通じて観賞と装飾にす可きものである。最も多く利用されるのは夏であるから、ここには主として夏に適したものに就いて述べる事とする。夏向きのものとしては、ボックスの中心植に八重咲マーガレット、ゼラニウム、ハイドランジャ、ランタナ等を以ってし、その周囲にフクシャ、ヘリオトロープ、ベゴニヤ、ペチュニヤ、マリゴールド等を調和よく植え、縁植として蔓バラ、ヴィンカ、ヂヤマン・アイビー(※ツタギク、セネキオ・ミカニオイデス)、ワンデリンヂグユー(※wondering jew トキワツユクサ)或はツレリング・ロベリヤ(※trailing)、ツレリング・アリッサム、蔓性のランタナ、ツレリング・フクシャ等最も適当なものである。そして之等は何れも夏から秋に渉って間断なく咲き競う花で美観と共に清涼な感じを与え捨て難い趣を持つものである。

植付け手順と土

植付けの手順として予め用意して置いた用土をボックスに搬入して、これに適宜魚粕と灰を混じ充分に撹拌して二三寸の厚さとなし、更に用土を入れ大きな植物、例えば八重咲マーガレットの如きものを箱の大きさに依って中央に一尺間隔位に植え、その中間にペチュニヤ、フクシャ、ヘリオトロープ等の如き丈の中性のものを植え縁植として前述せる各種の蔓性植物を植えるのである。
植え終わったならば静かに潅水を行い、一週間内外日影に置き、活着を見て予定の場所に取り付るのである。用土としてはあまり砂質を含まぬものであるならぽ、何れの土質でもよろしいが荒木田に如くものはない。

ポーチユボツクス

ポーチュボックスの材料もウインド・ボックスと同様で差支えない。ウインド・ボックスは窓側に取付けるものであるが、こればポーチュに備えるものであるので、ボックスの型も建築の構造に応じて色々構図を工夫して造ったならば、かなり趣の深いものであろう。
米国等に於ては場所に依って我国から輸入した醤油の空樽をぺンキ塗として(※ペンキを塗って)利用しているということであるが空き樽に限らず空瓶や其他の陶製品或は支那瓶(しながめ)の如きものをもって、ポーチ・ボックスに代わるにポーチュバット(※ porch vat)として用いたならば一層面白いと思う。
植付く可き植物としては中心には必ずドラセナ或は之に類するものを用いその周囲にはウインド・ボックスに用ゆると同様の花卉を植付ければ良いのである。(終わり)

※日本人は明治以来たくさんの人が出稼ぎあるいは移民として海外へと渡った。そのとき、醤油と味噌は生活するのに欠かせない調味料として大事にされた。
キッコーマン醤油のように海外へ輸出を手掛けたメーカーは少なくなかったと思われる。
日系人の多いアメリカ西海岸などでは、醤油樽を手に入れるのは難しくなかったと思われる。
参考 キッコーマン醤油の歴史


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