密閉した横穴の奥で麦のヌカを発酵させ、切花用花木の促成をする知恵 日本有数の植木の里、川口市の生産者の話
参考: ムロについて ※ここで「麦糖」「米糖」とあるのは、「麦糠」「米糠」が正しいと思われる。
https://karuchibe.jp/read/11551/
土窟での花木促成を私はこうやっている ※土窟(どくつ、つちむろ、ほらあな)
佐藤石松 埼玉県川口市木曽呂(きぞろ)
私のやっている土窟での花木切入(※きりいれ)促成のやり方を、桃、桜、椿、白蓮について述べます。
花木の切入れの土窟(ねかし室)は、まえもって大麦の搗糠の一回分(俗にバカヌカ)を、その土窟の二隅に入れます。そして、水と他材料を醗酵させる熱がF六十五度(※18℃)の時に切枝を入れられるようにする。そしてF七十度(※21℃)前後の熱度を維持できるよう、熱源材料を入れることが最も大切なことです。これが土窟出し花木の開花の良否を決定する重要因子です。
土窟の保温は、その広狭、土質、保水量、位置などにより一様でない。また、土窟が適温を保持できるかどうかを、さらに、ガスの発生有無もたしかめる必要があることなどをまえもって調べておく必要があります。
土窟の整備を完全に見極めたら、花木の切枝は、自然に咲く季節と品種を考慮に入れて切り出すことです。大体において、自然咲きの二ヵ月前に土窟で咲かせれば、その方法さえよければ失敗はないものです。椿類を土窟で咲かせる時は、なるべく椿だけの土窟がよい。なぜかといえば、椿は葉が多いので土窟を冷すため、切枝の花がよい結果をみないことが多いからです。
花木を土窟で咲かせるには、入れる前大体の品種は三~五日前に切り、各々の品種別に束ねます。関東方面の一丸束ねの三十五本を一シオリとし、四シオリを一束とし、六束たばねを半丸とし、十二束を一丸とします。椿、山茶花など葉のあるものは、一束を七~十本束ねとし、六束を半丸、十二束を一丸とします。一丸をバケツ、樽につけて切水しておく所では、日蔭で寒中凍らない温い納屋に入れておきます。また、花芽またはつけ水が凍った時は、土窟上りが悪くなりますから注意します。土窟の温度は、F六十五~七十度前後(18~21℃)が適当です。
表(※上図)は、埼玉県下を中心とした、土窟出しの日数ですが、これより早目のものはよく上り、遅れる時は上りの悪い時が多い。これによって花つきの良い枝を選ぶことが原則であることがわかります。