メリークリスマス! 参加者はみんな変わり者? 不思議な食べ物をもちよって、みんなで試食する 生き物趣味の会の晩餐会

 昭和6年の生き物趣味の会 百貨店で標本やジオラマ展示

解説のなかにも機関誌「アミーバ」や「珍食会」というワードが見い出せる。

https://karuchibe.jp/read/10873/


『実際園芸』第8巻2号 昭和5(1930)年2月号


(昭和4年)十二月二十日に開かれた

生物(いきもの)趣味の会

石井勇義


◇ ◇ ◇

生物の研究ということは専門の学者によって、未知の世界が日に月に開かれて行くことは論を俟たないが、この生物、即ち動物や植物についての事は、それが本当に好きだというアマテュアーの力によって開かれてゆくことがまた非常に多いものである。園芸でもそうであるが、植物や動物を扱うことは趣味がなかったなら、決してうまくゆくのでないことは今更述べるまでもない事である。

所が、東京に昨年の春から出来た生物(いきもの)趣味の会は「好きな人許りの集り」というすばらしい力のある会で、例のサラセニアや珍植物の処女培養で有名な広瀬巨海氏が主となり、新進の岡田喜一氏、瀬川孝吉氏、加藤(※光治?)氏、鈴木吉五郎氏などが世話役となって年に数回動植物の採集会や講演会をやり、生物趣味の鼓吹と研究に盡くされております。従来趣味の会とか、道楽の会とかいうものには研究的の態度が欠けておったが、この会は、そこにすばらしい力を持っているので、園芸をやっておられる方でも、真に趣味からやっておられる方で、研究的の心もちのあるものは是非お仲間入りをしたらよいと思う。

十二月の例会は、忘年の意味もあって、晩餐会であったが、来会者は鷹司侯、岡田彌一郎博士、矢野宗幹氏、東(ひがし)水産講習所教授、籾山徳太郎氏、松崎直枝氏、はじめ、生物界の権威者と趣味者三十数名集り、夫々会員持参の珍料理を試食したのであった。

試みに、二三掲げると、小林憲雄氏提出の紅焼熊掌(シュンジャン:※熊の掌の醤油煮込み)、岡田(※彌一郎)博士の小笠原島のしようがくぽうとたいまいの雑種の肉(※正覚坊=アオウミガメ、玳瑁=タイマイどちらもウミガメの種類)、松崎(※直枝)氏のたんぽぽ、籾山(※徳太郎)氏の十姉妹(※ジュウシマツ)、広瀬(※巨海)氏の鴨の脚の肉(川菊花)、大沢(※幸雄)氏の食用蛙肉、平沼(※大三郎)氏のフスダス(※ピスタチオ)等珍物許りで、試食研究晩餐会とでも言いたい会合であった。

一月の例会は、東京の朝日講堂で、映画と講演の会をやられ、科学的な活動写真と生物に関する面白い講演があられる由である。そのほかに、会からは「アミーバ」という会報を出しておられるが、その記事が、いづれもオリヂナルな物許りを発表するという権威さで、これまたこの会でなければ出来ぬようなものである。また「アミーバ」だけは会員でなくとも分けてくれる由であるが、会員になられる方は今のうちならば喜んで入会を希望される由である。会の事務所は、東京市外代々幡町代々木山谷一一〇、瀬川孝吉方である。会費は月額三円(入会金二円)である。若し本誌の読者で入会の希望者があれば御紹介の労をとる故私まで御申付下さい。

このブログの人気の投稿

横浜の「ガーデン山」にその名を残す横浜ガーデン主と伴田家との関係

大正12年12月20日(木)、有楽町駅すぐ(日比谷側)埼玉銀行の地下にて、高級園芸市場が営業を開始 すぐにスバル座あたりに移る

昭和9年11月、野菜の話  東京市場に集まる蔬菜の、とくに高級品全般についての総合的な研究談を聞く 小笠原の話題が興味深い