昭和八年の温室経営(バラ、カーネーション)に関する座談会 なぜ長田傳氏はカーネーションからバラに切り替えたのか?
温室園芸に関する座談会‐2‐ 『実際園芸』第14巻2号 昭和8年2月号
バラの栽培について
石井 長田(※おさだ)さん一つバラの話を願います。
長田 温室で普通作って居る品種は、先ず色分けでは混合色では、プレシデントフバー、マダムバタフライ、タリスマンそんなものでしょう、ピンクで はコンモンウエルス、ブライヤークリック、ローズヒル、コロンビヤ等で、コロンビヤは今大分すたって(ママ※すたれての意か)居ります。その外にその中でコンモンウエルス、ミセスチャーレスラッセルなんというものもあります。まあそんなものでしょうな。赤ではハドレー、イジーヒル、ブーヂャビューテー位のもん です。白ではダブルホワイトキラニ一が営利栽培として一番よいものです。黄ではスブニールドクローヂヤスペルネとかミセスクーリッヂ、ヂョアンナ・ヒルなどがあります。
石井 一番歓迎されるのは、
長田 先づ黄のペルネでしょう、それから、赤ではハドレー、ピンクではプライヤークリックです。
伴田 ハドレーは良いですね、然し漬けて置くと紫色になって非常にきたなくなります。カーネーションのように、色の変らないものは良いですが。ミセス・クーリッヂ、ゴールデンエンブレンというのがありましたね。
長田 今はすたってしまいましたね。黄ではペルネーに及ぶものはないのですから、先づ作るには、ペルネーでしょうね、余り進んでいないけれども、クーリッヂは収穫もあり良いでしょうね。白ではホワイトキラニーも作るのが良いと思います。
石井 坪当りはどの位切れるのですか。
長田 育ちは非常に差があるのです。まあ値段はこの頃は非常に安いから、坪当たり十五円から二十五円位の間でしょうね。だが良く作ると非常に差が起る。もっと値のあることもあります。震災当時は坪百円くらい上ったためしもありました。そしてそのハドレーは一本一円以上しました。近来は十五銭すれば良い方でしょう。
石井 それでは外の生産費は、
長田 石炭代は室内温度六十度にして普通一期間に坪当たり六円です。
石井 苗を植付けてから何年位切れますか。
長田 苗を植付けてその年が一番良い品物を出すことが出来るとしてありますが、私共の経験ではプルーニング(※pruning 剪定)さえうまく行けば、二年目が一番多いのです。
伴田 何年使えますか。
長田 温室でしくじった奴は、翌年は植え替えてしまう。そういうのは一年です。けれども普通ですと三年位大丈夫です。
伴田 挿木と接木とどちらが良いですか。
長田 温室は一年目のもので、接木の方がずっと宜いです。二年目は品質が少し変って来ますから、接木の方が落ちますよ。挿木の方が良いですね。
伴田 種類に依ってこれは挿木がよいとか、接木がよいとかいうことがありますか。
長田 それは殆どありiせんね。
石井 肥料は。
長田 肥料は普通元肥に牛糞ですね。牛糞の水に溶かしたやつを始終やる。元肥に骨粉を入れて追肥としてやります。時々やるのには鶏糞です。鶏糞はあまりやり過ぎると虫が湧きます。あれは肥料も強過ぎる。温度も高過ぎる、水が多過ぎる、それが大原因です。之を厳重にすれば、花だけは良 いです。それでペルネは出来れば毎年植え替えた方が宜しいですね。
伴田 長田さんはカーネーションが見込がないので、バラになされたのですか。
長田 管理が複雑して来るからです。却てカーネーションを作った方が得なんです。
石井 ばらの栽培は六ケ敷いと言われますが、そうでしょうか。
長田 確かに六ケ敷いものです。私は二十余年も作って居りますが、作れば作る程ばらは六ケ敷いものだという感じが深くなります。安部さんなども米国で隨分ばら栽培では苦心して来られたようですが、やっぱり私と同じ様に言って居られます。
稀れにばらを初めて作った時には、割合にうまく作れることがありますが、それはまぐれ当たりで 大抵三年目位から駄目になります。だから、ばらの温室を経営出来る人は他のあらゆる温室植物の管理が上手に出来る人だと思います。
石井 それでは栽培上で最も肝要な点は何んでしょうか。
長田 先づ温度でしょう。無論これは時期に依って違ます。夏は何分にも百度以上もあるので如何にもなりませんから、サイドのウインドもタラップのウインドも悉く開け放して通風に出来る限り注意しなければなりません。併し冬は石炭を焚いて、温度を保たせるのでありますから、温度の調節は出来る丈け厳重にしなければなりません。先づ日中は七十二三度乃至七十五度の間で調節し、夜は五十七八度から六十度止りで調節します。尚又ベンチレーションの上げ下げ等にも充分の注意をしなければなりません。ばら栽培の上手下手はこの温度の調節に依ってその大部分が左右されると言っても間違ないのであります。ですから私共は昼夜休みなく換気と温度の調節に注意している仕末です。
それから、肥料を沢山に用ゆることもばら栽培には面白いことではありません。温度を比較的低くしてベンチレーションを今言った様に注意すれば、先づ普通のものは出来ます。現在市場に見るばらの切花の多くは何れも肥料の施り過ぎと湿気が温度であるために水揚げも悪く、従って花持ちが悪くすぐに花首を垂れ下げて了う様になるので需要者側からもばらは持たぬものであると言われ、それがためにばらとしての価値を下げ、値段も安くなって来て居るのではないかと思われます。この点から言いましても日本のばら栽培家はお互にもっと充分研究する必要があると思います。
石井 では潅水やシリンジはどんな方法で行ったらよいでしょう。
長田 潅水は栽培品種、その年の気候、植物の状態、土壌等に依ってそれぞれ相違があります。栽培の品種で言えばハドレーの如き紅色花やホワイト・キラニーの様な白花色のものは他の種類よりも多量の水分を要しますが、ペルネ等は最も少量で足ります。そしてコロンビヤ、プライヤー・クリックという様な桃色品種は前二者の中間でよいし、万一黄色品種に紅色品種や白色品種同様の潅水を行うと、その花色も劣り発育も不良となる傾向があります。
気候の関係から言いますと、冬は最も少量にし、春季に入ってからは漸次増して夏季に最も多く施し秋季に至っては漸次その量を少くするようにしなければなりません。これと同様に各季節の初めと終りとはやはりその量を増減することは言うまでもありません。そして冬季は午前中に潅水を終る ようにし、又晴天の日を選んで多少換気を行ってから潅水するのが良いのです。植物の状態に依る場合では、成育の盛な時は多量の水分を要しますが、発育の緩慢な場合はそれよりも少量で充分です。多量に施す場合にも又少量の時でも、一定期間内に少量ずつ行って多量にする場合と、一変に多最施して回数を少くする場合とがありますが、これはその人の経験と技量に依って何れかの方法を行うのが安全であります。
土壌に依る場合はその土質が軽くて水保ちが悪く排水の良い場合は多量の潅水を要しますが、重粘で水保ちのよい土質の場合は少量でよいのであますし、又肥沃で多量の栄養分を含んでいる土壌も少量の潅水で結構であります。
次にシリンジですがこれは第一に葉の裏に繁殖するレッド・スパイダーを駆除予防し、第二には温室内の湿度を高め或は加減し、第三には葉や茎を清潔にして何時も美しくして置く土に重要な仕事の一つであります。ことにスパイダー駆除のためには是非これは必要で普通夏季は一週に二回、冬季は二週に三回行わなければなりません。これを行う日はなるべく晴天の日で温室内の温度が六十五度位になるのを待って朝早くからはじめ、冬季は必ず昼迄に終らなければなりません、そして潅水の合間合間にするやうにし、潅水を同日は行わぬようにします。ばら栽培でこのシリンジを上手に、また適当に行う事が出来れば一ケ年間には非常な利益を挙げることが出来ます。
石井 植え方はどんな方法でやって居られますか。
長田 苗を仕立て普通四月から七月迄の間に定植します。定植するには予め用意して置いた牛糞を藁などを切り混ぜてある用土を苗を定植する床に入れますが、この場合床(ベット)は地下水の高い処は高さを一尺乃至一尺五寸とし、地下水の低い処はその加減によって三寸乃至六寸位の高さにします。幅は三尺五寸乃至三尺七八寸止りが適当でしょう。そして床に入れた用土に更に骨粉を多いなあと思ふ位いに撒布して切り混ぜ、一様に程好く鎮圧してその表面をレーキでならし、地表を側板よりも一寸乃至一寸二分位低くなる位にします。そして普通ベッドを四本植とすれば株間は種類に依って多少の差はありますが、二尺二寸乃至一尺四寸とし間を三尺七八寸とします。人によっては温室々内経済のために種類の如何を不問(※問わず)畦間を一尺隔位にして植えますが、これはブラック・スポット等を発生せしめる原因となって結局損をすることになりますから、よい方法ではありません。
そして苗は床(ベッド)の最後部に大苗、その前に中の内の大、その前に中苗、二番前通りに小苗を植込む様にしますと花を切る頃となればその大小の区別が付かぬ様に一様に成育するので非常に便利であります。又一部の人々は定植の時間を八ヶ間敷(やかましく)言って居りますが、鉢から苗を抜いて直ぐに植込む様にすれば大して傷めることもありませんから例え日中でも一向差支ないと思います。
石井 ばらの今後の需要開係は如何でしょうか。
長田 無論、今後益々有望で将来発展の余地あるものと思います。殊にカーネーションと共にばらは切花としての重要な位置を占めて居るのですから、需要が多くなって来るのは明かです。只、先刻も申しました様に栽培の方法が悪いために品質の悪いものが市場に出荷されることは非常に一面か ら云って考えなくてはならないことだと思います。まあ、今の所この点さえ注意して行けば益々歓迎されるよになろうと思われます。
カーネーションの栽培について
石井 カーネーションに就いて犬塚さんにお伺いし度いと思います。
犬塚 結局私共の栽培しているカーネーションは、カーネーションの生命が明るい感じのする花です。そうして花が大きく幹が丈夫で、長保ちするというのが一番良いのです。そうして栽培の非常に容易な花色の明るい種類を大衆が歓迎する、それがなかなか統一しない、花が佳いのは比較的収穫が少い、豊産のものは株が弱い。管理をするのが難しいとか一利一害があって、現在日本では赤ではスペクトラムが一番営利栽培として、将来があるではないかと思います。それから花の色ですが、やはりかたよった色は売れ行きが悪い、ハッキリした 赤なら赤、ピンクならピンクで、中間の色はあまり大衆的でなく、栽培する人もあまり見込がないと思います。まあ極く小部分に作るには色の濃いものを入れることも、多少良いかも知れませぬが、それは沢山作るということは、余り望がないそうです。それでさっき長田さんのお話のように、余計に切れるものでも十五、六本、光づ七、八本から十本まで、平均すれば十一、二本止りと考えて居ります。種類はやはり白から言えば、エンチャントレスが年々金をあげて居ります。ところがこれは枯れ葉が附き易い、花が春になって弱い、収穫が思うほどないので、現在は赤の系続から行きますとやはりスペクトラムが一番で、茎がちよっと弱いですが、重ねが良くて花も大きくて株が非常に丈夫です。次にピンク系統ではやはりラデー、重ねも良し、花も多いし、丈夫で色彩も余り濃くないし、花としては代表的のものです。ヒンクスペクトラム、これは親の系統に似てちよっと弱いですが、豊産で営利栽培としては、或る程度まで有望ではないかと思います。その外にモーニンググロリー、是は薄桃色ですがね、それからジューエルピンク、こういうものが、最近多く栽培されて居るらしいのですが、その外にピンクの古いものでピンクエンチャントレスですが、有望なものは今後ピンクデンバーがよくはないかと思います。色の濃いピンクでは、ミセスダブリューワード、それからピンクエルドラ、その中でワードが花持が良く、茎が丈夫で、丈夫に作れば一番望があります。ペテルーは非常に好き嫌いがあります。営利栽培としては向かないのであります。あとは白です、白はマチレス、ハーベスター、国産としては泰山、これは初めてで結果はよく判りませんが、春になったら大変佳い花が咲きはしまいかと思います。作り屋としては、白色の将来は白謡或は之に同じ蕚の固いものが出来ればかなり良くはないかと思います。黄色ではメンサンシャイン、ノースター、英同系ではサフロン、花の一番住いのは茎が弱いのです、之に反してノースターは花は左程でないが、非常に多く、収穫が豊産であるし、茎が細い割合に丈夫です、黄色では是が一番住いと思います。種類はこんなものですね。
石井 そのうちで売れ行きの良い品種は如何なものですか。
犬塚 それは時期に依って違います。夏から秋にかけては何れかと言えば薄色の清楚な感じのあるもので、冬から春に渉っては濃厚な色彩のものが歓迎される様であります。そして全体的に見ますと結局何れの方面にも使える。つまり用途の広いピンク系の品種が平均して売れ行きがよいと言えましょう。
石井 品種と市価の関係はどんな具合でしょう。
犬塚 それは何と云っても花が大輪で花持も良く葉茎(ステーム)も丈夫で用途の広いと云う種類が尤も市価が良いのであります。例えばミセス・ワード、ラデー、ホワイト・マチレス、泰山を始めとして茎は多少細い憾みがありますが、スペクトラム、アイボリー、ノース・スター等です。この他私は未だ実際に作っては居りませんが土倉先生の実生作出された品種にも相当市価の良いものがある様です。殊に泰山は白色種では輸入種に優るもので従って値段も確かによい様です。
石井 それでは作り易い品種と作り難い品種に就いて伺いましょう。
犬塚 作り易いものでは先づスペクトラム、ピンク・スペクトラム、ノース・スター、エルドラ、泰山等で、之等の種類は成長力も旺盛で病虫害にも強く、少し注意さえ払えば大抵の者が良く作り得る一品種です。
作り難いものはミセス・ワード、ホワイト・マチレス、ラデー等で、特にワードやホワイト・マチレスはスポットに冒され易くラデーはラストが付き易いものです。よくカーネーションは六ヶ敷(むつかし)いと云うことを聞きますが、それは斯うした作り難い品種に初から手を染める為めではないかと思います。
石井 植え込んでから切り終わる迄に一番収穫の多い時期は何時ですか。
犬塚 さあそれは一概に一寸断言出来ません。普通今迄は一番多く収穫のある時期と言いますと、一年中で最も花の値段のよい時期です。つまり十二月中旬から二月上旬頃迄でありますが、大体一般に栽培者は此の上値の時期を目標として充分に収穫し得るやうにして居ます。然し現在では必ずし も右の時期のみが上値であるとは限りませんので、時に依っては需要の関係に他の時期にも可成り良い値のこともあるのです。ですから単に値段の良い時期をねらうということは困難なことになって来ましたので、結局一ヶ年を通じて間断なく平均に切れる様に作ることが、収穫を総体的に見て多くするものだという様に考えられて来ました。これ等は全く栽培者として見逃し難い肝腎のことでしょう。
石井 それではカーネーションは一株から一体何本位切れるものですか。
犬塚 品種に依って可成り相違があります。スペクトラム、モーニングロー、エルドラ、ノース・スター等の類ですと大株ならば平均十五六本、次にワード、ベテルー、ワシバン等の類は十二三本、ラデーは十本前後です。以前から作られて居るエンチャントレスは比較的豊産ですが先づ十三四本といったところでしょう。それから泰山、黄袍、旭日、白雲 等の邦産実生の品種は大抵十五六本から十七八本は切れるようです。多く切れる点に於ては確かに邦産実生の品種の方が率が良いと言えましょう。
石井 植え込みの方法としては如何な様にしますか。
犬塚 開花期との関係で早くから切ろうとするには早く植え込み、遅くから切ろうとすればやはり植え込みも遅くします。夏切りを仕様とするにはどうしても三四月頃に植え込まなければなりませんし、年暮を目的とすれば七月頃までに植え込みを終わる様にするのが普通です。
勿論、苗は温室で栽培したものでガッチリとした摘芯後に萌え出た芽が一二分伸長したものが申分ありません。そして植え込む可き苗のベンチヘは前日潅水して適当の湿気を与えて置き、苗を植える位置を定めます。畦(うね)はもちろん、ベンチの横の方向に取るのであって、畦間(うねま)の間隔は株間と共に品種に依ってそれぞれ違います。モーニングロー、スペクトラム、ノース・スター等の様に細い茎や葉の品種ですと割合に密植が出来ますから、畦間は六七寸、株間は五六寸とします、併しラデー、ワード等の大葉太茎の種類は畦間八寸、株間は七八寸とするのが普通です。
苗の植え込みの深さは深くない方がよいので、上根が漸く上に現れない程度になるべく浅く植えた方が宜いのですから、穴の深さもそれを程度として定めます。此の植穴が出来たらその中に苗を入れて、今言った様に浅く根に覆土して根元をよく指先で圧え付けて置きます。植え込みに際して特に注意することはなるべく苗の毛根を傷めぬ様に、又根土を崩さぬ様にして枯葉や其他の不用物を取去って綺麗に掃除してから植え込むことです。
石井 肥料はどんなものが良いでしょう。犬塚 カーネーションの肥料としては牛糞を主なるものとし、燐酸、加里を補う為めに骨粉とか鰊粕、或は藁灰などを使用します。人に依っては過燐酸石灰、硫酸アンモニヤ、硫酸加重等の化学肥料を用いますが、これは施用量を誤ると危険ですから寧ろ使用しない方が安全です。とに角急激に肥効のあるものは便利な代りに如何しても危険を伴います。この点から云っても緩漫な効力を持つ肥料を選ぶようにします。それには牛糞、骨粉と云う様なものは理想的な肥料です。魚肥も悪くはありませんが、それも量が過ぎると葉茎が軟弱になり易いのであまり感心出来ません。若し強いて魚肥を使用する場合には、それに藁灰を混用すれば或る程度までは大丈夫です。そして魚肥は元肥とするよりも追肥とす可きものだと思います。
牛糞や骨粉は元肥にも追肥にも使用されますが牛糞は追肥の場合は充分腐熟したものを液肥とする方が良い様です。鰊粕、灰類等も追肥として欠く可らざるものです。
石井 虫害の処置には何が有効ですか。
犬塚 虫害で一番多いのは赤ダニ(レッド・スパイダー)ですが、これにはデリス根粉末八匁に粉石鹸十五匁を混ぜて約二斗の水に溶解させたものを撒布するのが最も良い駆除法です。又、塩水を撒布して三時間後に洗い落すが、圧力の強いシリンジに依って洗い落す方法等もあります。その外に温室内の暖房のパイプに硫黄塗って暖房の熱度によって硫黄を発散せしめてスパイダーを駆除する硫黄燻蒸というのがありますがこれは硫黄があまり強いと花を傷め、虫害以上の失敗をしますからよほど経験したものでなくては危険です。
次はスポット(※不明、斑点病か?)ですが、これは見付次第取ってすてるのが一番良い方法です。乾燥さしてボルド液を撒布する方法もありますが、如何もこれはあまり効果がありません。
石井 では今日の座談会はこれだけにします。どうも大変有難う御座いました。
(終わり)
◇ ◇
この座談会に御出席下さいました方々を御照介いたします。
口伴田四郎氏
高級園芸市場理事長で、蒲田区六郷町に温室園芸を経営され、大日本園芸組合副組合長、東京府園芸組合副会長の要職にある方である。
口長田傳氏
大森区馬込町にバラ栽培専門温室を経営されて居り、バラ栽培の権威者で、東京農業大学を出られて二十年間米国にあって温室園芸に従事され、大正十年帰朝され、本邦のバラ、カーネーションの栽培、営利温室界に革新的貢献をされた方である。
口犬塚卓一氏
同氏は米国オレゴン州に於て二十年あまり温室園芸に従事された方で殊にカーネーションの栽培の第一人者で、現に玉川温室村に広大なる温室を経営されている。米国より各種のカーネーションの原種を輸入され、栽培上の改良方面に貢献された方である。
囗鴨下栄吉氏
百合の温室栽培にかけての第一人者で、今日でこそ各方面で百合が作られる様になったが、冷蔵法を行って促成するのを我国で始めて実際にやった方で、現に二百坪あまりの百合専門の温室を経営して居られる。
囗関 朝次氏
木物の温室促成に於ける第一人者である。東京市内に植物促成品で同氏の生産物品の右に出づるものはない。現に関東花卉生産連合会長の要職にある。
φ来月号の座談会
なお三月には「促成野菜に関する座談会」を開きます。その時には東京市内で一番促成ものを沢山に取扱って居る問屋の主人数名と、栽培家、それに東京市内一流の料理店で最も促成品を沢山に用いて居る料理人に出て頂いて、使う方の側からの批評も伺って、地方生産者の参考にしたいと思います。つまり、本誌の立場からして、実際にはあまり手を下して居られないお役所の方よりも毎日栽培に当っておられる作り屋の方、それを実際に取扱って居る問屋の方、又それを毎日料理して居られる消費者側の生きた経験からの御意見を伺いたいというのが主眼であります。
三月号は二月下旬に発行されるのですから促成ものの一番多く出荷される時期に向ってであります。