アリウム丹頂は、どうやって曲げているのか?慣れると一人一日2,000本は曲げられる
『花卉』2(秋の花作り百科)博友社園芸日本編集部 編 博友社 1957年 から
※切花として市場流通するアリウムの仲間には、茎が面白く曲げられているものがある。あれは、いったい、どのように仕立てているのだろうか。この記事ではとてもわかり易く具体的に解説している。
※植物は水を吸っていると葉や茎が折れたり傷つきやすくなる。アリウムを曲げる場合も雨天や露のあるときは避けたほうがよいと書かれている。支柱を使って曲げる期間は、切花前三日~一週間がよいということである。思ったより短期間で型がつくられると感じた。
※アレンジメントに利用する場合は曲がったものばかりが束ねてあるほうが使用目的に依って仕入れて使うのに便利だが、いけばなに利用する場合は、真っ直ぐなものを含め、いろいろな曲がりのものが混ざってひと束になっているほうが利用しやすいのかもしれない。
曲げ方と出荷のコツ
中村利夫(横浜市港北区新羽町花光園)
元来真直なものをわざわざ曲げることによって、その物の市場価値を上げるなどとは、全く変テコな世の中と思われる向もあるかも知れない。しかし斑入りやら、香篆 (こうてん:香煙のゆらぐ意)もの、綴化(てっか)ものなどが花材や庭木に珍重され、風に曲ったリヤトリスやトリトマ等が、一部で高値に取引されることもあるくらいであるから、別に異とするに足りぬともいえる。
ここでは大量栽培を対称とし比較的小球性で開花するアフラチュエンセ(※正しくはア・アフラチュネンセ)、丹頂(※ア・スファエロセファルム)など。特に丹頂に例をとったが、他はそれに準ずることができる。
丹頂の場合、株全体が直立性で横幅をとらぬため、密植が可能で、坪二百球は植えられる。つまり反当り十万球である。これを全部曲げる必要はなく、後述の理由で二~五割を曲げればよい。
曲げ方
材料
まずアリアムの草丈に地中にさしこむ長さを加えた篠竹を曲げるべき本数の約二、三割と、輪ゴムを曲げる数だけ用意する。
時期
種類により多少の開きがあるが、切花前三日~一週間が良い。あまり早いと、茎がのびても花が同じ位置に止っているため、下向になりおかしくなる。遅すぎると茎が固まってしまう。また、雨天や露のある中は避ける。茎が硬直して折れやすいからである。
方法
図のAのように輪ゴムを前にひっかけてからBのように首ごと竹にぐるぐる二三度まきつけ、最後にCのようにまた首にひっかけてとめる。この時、大曲り、小曲り、右巻、左をなど工夫して曲りぶりに変化を持たす。また、茎の下部半分ほどは、活花(いけばな)のとき脚といって、曲げずに残さないと使いにくいものができる。一本の竹に三~四本の茎をからませることができ、開花の時期が斉一でないため、最初にまげて固まったものは、とり外して次の新しい茎にまた使える。(※支柱に使う)竹はまげる本数の二、三割と書いたのはこの理由による。こうして熟練すれば一人一日二千本位は曲げられる。
収穫と出荷
丹頂の場合は、花の上方が色づき初めたら切ってよく、他の品種では蕾がふくらみ、固有の色がつき初めたら葉のすぐ上から切る.切りとったものは十本一束とし、この中三~五本曲げたものを入れればよい。