『フラワーデザインのすべて』誠文堂新光社 ガーデンライフ別冊 1968年と69年の改訂新版について
『フラワーデザインのすべて』1968(昭和43)年版 表紙 モデル・喜浦節子(東宝)
改訂新版『フラワーデザインのすべて』1969(昭和44)年 モデル遠藤裕子
●2年間、立て続けに出た『フラワーデザインのすべて』
『フラワーデザインのすべて』という本は雑誌『ガーデンライフ』の別冊として1968(昭和43)年に誠文堂新光社から出版された。ペーパーバック式の装丁で(いわゆるムック本)、表紙は笠原貞男氏による。コサージュやブーケの見本がカラー写真でいくつも掲載され、ワイヤリングなど、つくりかたの要点が解説されているほか、洋風デザインの歴史や冠婚葬祭のルール、花言葉、誕生花など知っておくべき知識も紹介されている。そのほか、ドライフラワーや資材とその使いかた、指導書の案内、来日した有名な外国人デザイナーの紹介、また国内の主要なフラワーデザインスクールや資材店のリストもある。この時代にフラワーデザインを志す人にとって必要な情報が一冊に網羅されたたいへんに便利でよくできた内容の本である。
この本は定価950円という値段は安いものではないが(消費者物価指数換算で現在は約4.2倍になっているから4~5,000円の感覚)、手頃な教科書が出回っていない時代なので、おそらくすぐに売り切れてしまったのではないかと思われる。
というのも、翌1969(昭和44)年にははやくも「改訂新版」として、厚手の表紙でしっかりとした装丁になったものが新たに発行されているからだ。
表紙は前回と同じく笠原貞男氏であるが、立派なコチョウランをたくさん使ったデザインが目につく。こちらは定価1,400円である。いま、手元にあるものの奥付を見ると、昭和47年で第4刷となかなかの売れ行きだったことが想像できる。現在、ネットオークションなどで、この69年の改訂新版はけっこうよく見かける、68年版も少ないが、ときどき出ている。
68年版と69年版の違いは、後者はマミ川崎氏のページが増えていることだろう。
まず、どちらにも「座談会 フラワーデザインとは」という企画が掲載されているのだが、前者にはいけばな草月流の次期家元・勅使河原霞氏が参加しているのだが、後者では、勅使河原霞氏に代わってマミ川崎氏が登場している。また、本の後半にはマミ川崎氏によるペーパフラワー(造花)のデザインが15ページ挿入されている。これにカラーページとスクール紹介、広告などのページが増えており、全体としては270→314と44ページのボリュームになった。
※参考
◎1967(昭和42)年には、マミフラワーデザインスクール「マミ川崎」氏による初の個展が開催された。同じ年に「日本フラワーデザイナー協会」が設立されている。フラワーデザインブームが盛り上がっていたことがわかる。
◎1971年には、若手デザイナー集団「エクセレント12」による歴史的なデモンストレーションショーが行われた。
●海外の参考書と日本の参考書がリストになっている。
永島四郎氏の『花のデザイン』は、すでに「古臭い」ものになっていた。。。。。
多くのデザイナーは若く、永島氏は老いていたが、ほんとうに優れた装花をつくっていたと思う。若い人たちは先輩を相克しようとするが、歴史を振り返ると、ほんとうに優れていたのは誰かが見えてくるのではないだろうか。
●1968年版「フラワーデザインのすべて」にある広告
当時、松村工芸が「オアシス」の販売代理店になっていた