いけばな文化史年表 工藤昌伸氏による
『日本いけばな文化史』 工藤昌伸・著 同朋舎出版 1993(平成5)年
工藤昌伸氏は、日本の花の全史を1枚の絵図にまとめている。この絵図は、『日本いけばな文化史』全5巻全てに一枚ずつ同じものが付録されている。
これによると、日本の花は
仏教以前の「依代(よりしろ)」、仏教伝来以後の「供花(くげ、きょうか)」、その他(花合わせ、シンプルに瓶に花を挿す)といった形態が、室町中期に「立てる花、いける花」として花形にまとめられていく。
これら室町期の花は大きく「立て花、なげいれ花」の系統の源泉となった。立て花はその後「立花(りっか)」となり、なげいれ花は「茶の湯の花」「抛入花(なげいればな)」に分流する。
茶の湯はいわゆる「茶花」として今日に至る。
一方の「抛入花」からは「生花(せいか、しょうか)」に展開し「文人花」が派生した。
明治期以降は、洋花の導入や西洋の花卉装飾の影響もあり、「盛花(もりばな)」が流行。また、他の芸術の近代化運動とも連動するかのように「自由花」が考案され広まった。
●年表図で重要なのは、過去に成立した形式が、今日まで絶えずに伝わっていることである。これにより、日本の花はとても多様な姿になっている。これはとりもなおさず、日本に存在した多様な植物を多様なままに生かそうとした先人の取り組みがあったこと、そして現在もそれが続いていることを示している。
●神仏に供え、祖先や大切な人を思う花、装飾のための花、自分のためにいける花、これらの形態が過去から現在まで綿々と伝えられている。