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昭和8年ごろの日本のカーネーション生産の現場についての論文 鈴木譲氏 『農業及び園芸』9(1) 1934年1月号

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 『農業及園芸』(農業および園芸)第9巻1号 1934年 温室カーネーションの生産特に其の実際経営に就て 鈴木 譲 1、温室カーネーションの意義 2、我国に於ける温室カーネーションの生産及び消費状況 3、生産者より消費者へ渡る経路 4、営利用カーネーションの品質ならびに品種 5、カーネーションと其の栽培環境 6、温室カーネーションの経営 7、カーネーション温室経営の収支計算 1 温室カーネーションの意義 ここに温室カーネーションと云ふのは、アメリカン・トリー・カーネーションと称せられるもので、多年性、四季咲、原種は南ヨーロッパが原産、半耐冬性多年性一重咲肉色のものであったが、十九世紀中頃フランスで四季咲種が作出され、更に米国に渡って非常な発達をなし現在の如く長茎大輪八重、多種多様な色彩の立派なものに作り上げたのである。我国へは既に3、40年前に渡来して栽培せられて居るが、東京附近の気温では厳冬殆ど枯死するので温室内に栽培が限られ、従って数年前迄はカーネーションは秋から春迄のものとなって居たが、温室内で作られたものは、夏季でも花の保ちが非常に良い事が広く知れ渡って来たので、その後は夏も盛に生産せられて居る。生花商の話では温室産と露地産とは花の保ちが7日と2日との相違があるとの事である。尚2、3年前から温室カーネーションを露地に栽培して、初夏から秋に切花を生産する事が初められ温室産に品質は及ばないが、相当立派なものが出来近頃各地に露地栽培がますます盛んになって来た。更に暖地では冬季も露地で切花が生産せられるやうになる事も予想せられる。然し温室三はまた独特の品質と品位を持っている。故に永く確たる地歩を保って行く事は確である。 2 我国に於ける温室カーネーションの生産及び消費状況 我国の温室カーネーションの生産地は勿論東京付近であるが、其内でも第一位は多摩川畔の田園調布温室村であり、第二位は神奈川県富岡及び杉田地方である。以下見易いやうに其産地別に列記する。 第1表 東京市場を中心とするカーネーション生産地ならびに其面積(生産地、温室面積) 東京市大森区田園調布四丁目(田園調布温室村)6,150坪 神奈川県久良岐郡富岡及び横浜市杉田地方2,250坪 神奈川県橘樹郡溝口及び其下流川崎市の北部に至る地方2,000坪 東京市田園調布温室村以北砧村に至る地方1,200坪 東京市田園